開催期間:2021/07/22 ~ 2021/09/12
甲野勇(こうのいさむ)は、1946(昭和21)年から1967(昭和42)年に亡くなるまでの、およそ20年間を国立に暮らした考古学者です。甲野は、幼い頃に同居していた大叔父の部屋で黒曜石の槍や鏃を発見していたことから、大昔の人々の生活に関心を抱き、13才頃には1人であちこちと発掘してまわるような少年でした。1922(大正11)年に東京帝国大学理学部人類学科選科へ進学した頃からは、同窓である山内清男や八幡一郎とともに「編年学派の三羽烏」と呼ばれ、日本の考古学史に名を残しました。
終戦後に国立へと越してきた甲野は、敗戦により、それまで信じていた”歴史”を失った青少年に対し、正しい古代史を編成して「心のよりべ」を与えることが自身の使命であると考え、青少年の教育活動を開始します。教育のため、あらゆる機会を設けることに惜しみない努力をはらった甲野は、中学校や高校のクラブ活動での発掘調査の指導や、文化財保護に関する啓蒙活動を積極的に行っています。また、「遠祖の文化遺産を直接の基礎として編纂する」博物館の設立にも尽力しました。
本展では、当館が所蔵する甲野勇旧蔵の資料から、甲野が指導した発掘調査や博物館活動を中心に、多摩地域における甲野の功績を振り返ります。